HIP HOPにおけるサンプリングとトレンドプロデューサーの歴史
■ヒップホップにおけるプロデューサーの立場とは?
HIP HOPの制作において、アーティスト、レーベルと共に、重要な要素はプロデューサーの存在です。
プロデューサーは、作品のトラックメイキングを含めたほとんどすぺての作業に関わることが多く、楽曲製作において最も偉大な存在でもあります。トレンディーなプロデューサーは、ラップしているアーティストよりも、むしろ重く扱われることがあり、多くのヒップホップファンはプロデューサー名を参考にレコードを買うことも多いのです。
■サンプリングミュージックの過去から現在まで。
70年代後半、ジャマイカ移民のDJ Kool Hercが、既存のレコードに入っているブレークビーツを、2枚使用し繰り返すといった手法を生み出しました。その手法は今では伝説となった当時の人気DJ達の手により、広く普及することになります。
その後、ヒップホップのレコードも発売されるようになるのですが、ヒップホップの歴史に必ず出てくるSUGER HILL GANG「Rapper's Delight」(1979年)のレコードも、デジタルサンプリングではなくバンドによる弾き直しでした。
しかし、80年代に入りクイーンズのMarley Marlの発明によってシーンは劇的に変化します。
それは、当時の最新機材のSP-1200(現在はヒップホップ制作の定番機)を使用し、他人のレコードに入っているブレークビーツをサンプリングして、新たに楽曲を再構築するという、80年代音楽シーンにおける最大の発明をしたことです。ここからSP-1200が持つ荒れた音質が、その後のヒップホップの代名詞になり、その後のAKAI MPC-60などの登場により、更にサンプリングという方法が成熟していきます。
彼の発明によって、次々とレコードがリリースされ、彼に影響を受けたアーティスト達が名作を作っていきます。その中には、現在のモンスターヒップホップレーベル、Def Jamを起こしたRussell Simons、Rick Rubinもおり、ハードロックをサンプリングするといった画期的なアイデアが生まれ、今までに無いほどのビッグヒットを記録していきます。また、大小様々なレーベルが生まれ、その後の商業的に潤うシーンの流れを作っていきます。
90年代にはMarley Marlの直系の弟子のPete RockやDJ Premier、Large Professor、Wu-Tang ClanのRZA、D.I.T.C.、Prince Paul等といった東海岸のプロデューサーや、N.W.A.を離脱しソロになった西海岸のDr.DREらがトレンドを作っていきます。
しかし、90年代後半、ニューヨークのシーンでは、それまで主流だった音楽制作のトレンドは急変し、サンプリングからサウス色の強い機材中心での時代に突入します。Ruff RydersのSwizz BeatzやTimbalandそしてThe Neptunesの登場により、頭打ち状態であったサンプリングシーンからの人離れが起こったのではないかと思われます。
しかしその間にも、西海岸やアメリカ以外の国、そしてアンダーグランドなシーンでは、更にサンプリングを発展させる動きをしており、2003年頃をきっかけに、KANYE WEST、9th WONDER、J Dilla、Madlib等のプロデューサーの人気により、再び主流の音楽制作手段として再評価されます。現在では、ハイフィーサウンドと、サンプリングサウンドは共存しており、どちらも人気のある手法として多くのファン達に認識されています。
■代表的なプロデューサー
MARLEY MARL
CED GEE
RICK RUBEN
HANC SHOCKLEE
PRINCE PAUL
PETE ROCK
DJ PREMIER
DR.DRE
LARGE PROFESSOR
DJ SHADOW
DJ KRUSH
JUST BLAZE
J-DILLA
MADLIB
KANYE WEST
9TH WONDER
DJ Kool Herc

言わずと知れたヒップホップ界最大の発明家。ブレークビーツの概念が無ければ、ヒップホップカルチャーは無かったも同然。
Marley Marl 
デジタルサンプリングを始めて実践した80、90年代を代表する名プロデューサー。自身の軍団ジュースクルーには、当時最強のメンバーが揃い、KRS-ONEとのブリッジバトルは、ヒップホップ界の歴史に残る大喧嘩としてあまりにも有名。
DEF JAM Recording
Russell Simons&Rick Rubin

現在もまだ勢いがとまらない怪物レーベルDEF JAMの創始者。Russellの弟はRUN-DMCのRUN。Rick Rubinはその後袂を分かち、レッチリ等のプロデュースをすることに。
Public enemy

DEF JAMレーベル初期に在籍した社会派ラップグループ。コンシャスな歌詞や、Hanc Shockleeが作る、独特のザラついたSP-1200サウンドがムーブメントを起こした。
N.W.A.

西海岸の伝説のグループ。ストレートな歌詞で、ギャングスタラップの礎を築いた。Ice Cube、Dr.Dre、そしてEazy-Eを輩出。
Pete Rock

Jazzネタでのヒップホップ制作に早くから取り組み、CL Smoothとのコンビで活躍。それ以外にも、リミックス、プロデュースワークには外しが無く、数々のクラシックを輩出。元々人気アーティストの従兄弟だったりと、サラブレット体質。現在でも、Dubへのアプローチをするなど攻撃的。
DJ Premier

ネタをチョップするなど、サンプリング音楽の歴史を塗り替え、ネクストレベルに押し上げた生ける伝説。ミニマルでドープなトラックに、独特のスクラッチを乗せたスタイルは、数々のフォロアーを生み出した。自身のGang Starrが素晴らしいのはもちろん、それ以外のアーティストへの楽曲提供によるヒットも数知れず。
Large Professor

伝説のMain Sourceにおいてのプロデュースワークはもちろんのこと、当時駆け出しのNasを発掘した功績は大きい。他アーティストへのリミックス仕事にて、神がかりな仕事をし、90年代を代表するプロデューサーに殿堂入り。
Dr.Dre

チンピラだったSnoop Doggを発掘し、G-Funkサウンドによって一躍スターダムにのし上げた、ヒップホップ界最高のプロデューサーの一人。低迷を抜け、エミネムを発掘し再びトレンドを築く。彼の後にも先にも、2回のムーブメントを作った人はいません。
RZA

Wu-Tang Clanの総帥。町の友達やら親戚を集め、奇怪なトラックで世界を席巻。また、メンバーそれぞれをソロデビューさせ成功させる。映画音楽や俳優にも挑戦する、オルタナティブなプロデューサー。
DJ Shadow

本国アメリカより、日本、英国にて火が付いたアーティスト。DJ Krush、DJ Camと並びインストヒップホップのムーブメントを牽引。その後、DJ Cut ChemistとのDJセットなどでも注目を浴び、近年ではハイフィーサウンドにも挑戦している貪欲な人。
Kanye West

音楽のみならず、ライフスタイルまでがトレンドになっている現在のカリスマ。Jay-Zに見初められてからというもの、サンプリングをトレンドに戻し、再び新しい音楽として世に知らしめた。
J Dilla (jay dee)

魂(車)の町デトロイト出身。その強烈なドラム&ベースを軸とした、ソウルフルなデトロイトマナーな音楽性と、メジャー系楽曲に近いオラオラ感を行き来し混ざり合う、ワンアンドオンリーな音楽観を構築。現在のヒップホップシーンにおいて世界中に大量のフォロアーを生みだした。2006年他界。
Madlib

J Dillaと並び現在のアンダーグランド界の王子様。架空のJazzバンドを結成してみたり、ブロークンビーツを作ったりと、とにかく作品リリース量とバラエティが多め。サンプリングのトレンドを作っている一人と言っても過言ではありません。
![sampling-love [サンプリングラブ]](img/header_logo2.gif)




